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国際交流パリの石橋財団コレクション展

石橋財団コレクション(旧・石橋コレクション)はパリにおいてこれまで2度、海外展が行われています。1962年のパリ国立近代美術館「東京石橋コレクション所蔵 コローからブラックに至るフランス絵画展」と、2017年のオランジュリー美術館「ブリヂストン美術館の名品−石橋財団コレクション展」です。どちらも現地で高い評価を得た展覧会でした。

1962年 パリ国立近代美術館
「東京石橋コレクション所蔵 コローからブラックに至るフランス絵画展」

会場となったパリ国立近代美術館

1961年10月、パリ国立近代美術館副館長ベルナール・ドリヴァル氏がブリヂストン美術館(現・アーティゾン美術館)を訪れました。ドリヴァル氏からは、石橋財団創設者で当時館長を務めていた石橋正二郎に対し、パリでの展覧会開催と出品の依頼がありました。正二郎は、自身のコレクションを初めて海外で公開する機会に恵まれ、後に「望外の光栄」であったと回想しています。
「東京石橋コレクション所蔵 コローからブラックに至るフランス絵画展」(パリ国立近代美術館、5月4日–6月24日)と題されたこの展覧会は、コローやモネ、セザンヌなどのフランス近代絵画50点(うち8点は松方コレクションほかの寄託作品)をパリで展示したことから、「里帰り展」とも呼ばれました。
会場となったパリ国立近代美術館では、展示室内に屛風を模した仮設壁を設置し、作品を展示しました。5月3日夜の美術館友の会内覧会には約500人、翌4日の開会式には約1,000人が出席しています。

展示会場
開会式にて。右から一人おいて、ドリヴァル氏、萩原徹駐仏大使、石橋正二郎

展覧会はル・フィガロ、ル・モンド、アールなどの現地各紙で取り上げられ、主要作品の解説のほかに、極東にフランス美術の良質なコレクションができあがっていること、それが一人の実業家によって成し遂げられたこと、などが紹介されました。
会期中には修復家のジャック・マレシャル氏の手で作品23点が修復洗浄されました。当時、日本で絵画の洗浄を行うことは稀でしたが、フランス文化大臣アンドレ・マルロー氏の勧めを受け、修復洗浄を行うことが決まりました。マレシャル氏は翌1963年にブリヂストン美術館と国立西洋美術館の共同招聘により来日し、作品の修復洗浄を行っています。作品の修復という点からも、日本の美術界に影響を与えた展覧会でした。

修復処置中のマレシャル氏

2017年 オランジュリー美術館
「ブリヂストン美術館の名品−石橋財団コレクション展」

2017年には、オルセー美術館、オランジュリー美術館、石橋財団の共催で、パリのオランジュリー美術館において「ブリヂストン美術館の名品−石橋財団コレクション」展(4月5日–8月21日)が開催され、石橋財団コレクションの代表的な作品76点が展示されました。
オルセー美術館、オランジュリー美術館、ブリヂストン美術館は2012年に「ドビュッシー、音楽と美術」展を共同で開催して以来、協力関係を築いていました。「ブリヂストン美術館の名品−石橋財団コレクション」展はオランジュリー美術館の発案を受けて、ブリヂストン美術館の建て替え工事による長期休館を機に実現したものです。

展覧会会場のオランジュリー美術館前に並ぶ来館者
118日間の会期中に42万人が来館

展覧会では、石橋正二郎の美術への情熱から始まり、日本近代洋画、印象派、ポスト印象派、20世紀前半を中心とするモダン・アート、第二次世界大戦後の抽象美術・具象美術へと、時代の流れに沿って石橋財団コレクションの作品が紹介されました。欧米の作品ばかりでなく、青木繁、坂本繁二郎、古賀春江、藤島武二といった日本の近代洋画についても知ってもらう機会となり、展覧会以降、「洋画(YOGA)」という言葉が盛んに使われるようになったといいます。
入場者数は118日間の会期中に42万人と盛況を博しました。フランスのメディアでは、新聞「ル・フィガロ」「ル・パリジャン」、カルチャー誌「テレラマ」「レクスプレス」、ニュースサイト「ル・パリジャン・エテュディアント」「アトランティコ」などが取り上げ、日本のメディアも、新聞「日経新聞」「朝日新聞」「新美術新聞」、雑誌「BRUTUS」「芸術新潮」「MOMENTUM」、Web「メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド」「casabrutsu.com」などが現地の様子を詳しく伝えました。
石橋財団コレクションの広がりや、日本近代洋画の存在、国境を超えて創造に対峙するさまざまな作家について、フランスにおいて提示する貴重な機会となりました。

展覧会ポスター
フランスでの展覧会の反響。各メディアで広く紹介された