石橋財団の創設者 石橋正二郎は1889年、福岡県久留米市に生まれました。17歳のとき家業の仕立物屋を継ぎ、地下足袋の創製やゴム靴の製造を通じて全国的な企業へと拡大しました。1931年にはブリッヂストンタイヤ株式会社(現・株式会社ブリヂストン)を創業し、自動車タイヤの国産化に成功して、同社を日本を代表する企業へと成長させました。
正二郎は企業経営においても社会への貢献を大切と考えていました。自著にこのように記しています。「絶えず時世の変化を洞察して時勢に一歩先んじ、よりよい製品を創造して社会の進歩発展に役立つよう心がけ、社会への貢献が大きければ大きいほど事業は繁栄する」。
一方で、正二郎は若年の頃から文化事業にも取り組みました。1928年には九州医学専門学校(現・久留米大学)の創設に際して、学校用地と校舎を寄贈。また、長年にわたって久留米や東京の学校・教育機関に対して、さまざまな施設の寄贈や教育活動への寄付助成を行っています。
1927年頃から絵画の蒐集を始めましたが、早くからこれを公開する意志を抱き、1952年、東京・京橋のブリヂストンビル2階にブリヂストン美術館(現・アーティゾン美術館)を開館。自らのコレクションを一般に公開しました。その後も、久留米の石橋文化センター(1956)、ヴェネチア・ビエンナーレ日本館(1956)、東京国立近代美術館(1969)と、数々の文化施設を建設し、寄贈しました。正二郎は1976年に永眠しました。ブリヂストンに代表される企業経営と、さまざまな文化事業を両輪にして、社会貢献に尽くした生涯でした。